2016年3月28日月曜日

【テキスト分析①農業編】 史上最悪の農業つぶし協定

 

「除外」規定が存在しない!?

 TPP による日本の関税撤廃率は95%で、農林水産品では2,594 品目のうち2,135品目(82%)が撤廃されます。「聖域」とした重要品目も170 品目(29%)が撤廃、重要品目以外では98%が撤廃となるのです。自民党が「ぎりぎり超えられない一線」としていた日豪EPA を上回る、史上最悪の農業つぶし協定であるといえるでしょう。
 これまでの自由貿易協定(FTA やEPA)には、関税の撤廃・削減をしない「除外」や「再協議」の対象がありましたが、TPP にはその規定が存在しません。そのため一切の物品が撤廃対象となり、今回は撤廃とならなかった品目も、将来的に撤廃を迫られる可能性が大きいのです。重要 品目を「除外又は再協議の対象とする」とした国会決議にも反しています。

後戻りできない、関税撤廃への道

 日本は、7 年後に米国など農産物輸出5 か国の要請に応じ、関税、関税割当、セーフガードを含む全面的な見直し協議を行うことが義務付けられています。日本のように複数国の見直し要請に応じる約 束をしている国はありません。段階的に関税を撤廃する品目は、撤廃時期の繰上げについても協議ができます。
 TPP で初めて設置される「農業貿易に関する小委員会」は、農産品の貿易促進を任務としており、発効後5年間は少なくとも年1 回会合すると規定されています。日本に対し、さらなる市場開放の圧力を恒常的にかける仕組みになることが懸念されます。

遺伝子組み換え作物の輸入が増大する恐れ

 「内国民待遇及び物品の市場アクセス」章に組み込まれた「現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」は、日本や米国がこれまでに結んだいずれの EPA、FTAにも存在しない項目です。TPP が、遺伝子組み換え(GM)作物の貿易を大幅に加速させかねない条約だということを示しているといえるでしょう。既存の国際条約と比べて、GM作物輸出国 の義務があいまいで、輸入国の権利が弱められているなど問題点が多い。貿易の中断を回避し、新規承認を促進する条項があるほか、GM作物の貿易に関する情 報交換と協力を進める作業部会も設置されます。

★より詳しく知りたい方は「TPPテキスト分析レポート」へ
http://www.parc-jp.org/teigen/2016/TPPtextanalysis_ver.4.pdf




【関連する協定文】
第2章 内国民待遇及び物品の市場アクセス
●第2.4 条2項 各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、附属書2-D(関税に係る約束)の自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する。
●附属書2-D(日本国の関税率表:一般的注釈)9(a) オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド又はアメリカ合衆国の要請に基づき、(中略)原産品の待遇についての約束(この表における関税、関税割当 及びセーフガードの適用に関するもの)について検討するため、(中略)七年を経過する日以後に協議する。
●第2.4 条3 項 いずれかの締約国の要請に応じ、(中略)関税の撤廃時期の繰上げについて検討するため、協議する。
●第2.25 条2 項 農業貿易に関する小委員会は、次のことのための場を提供する。(a)(中略)農産品の貿易(中略)を促進すること。
●第2.27 条9 項 締約国は、貿易に関連する事項であって現代のバイオテクノロジーによる生産品に関連するものについて情報交換及び協力を行うため、ここに、農業貿易に関する小委員会の下に現代のバイオテクノロジーによる生産品に関する作業部会(中略)を設置する。

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